多彩な撮影機能を搭載しているオリンパス(OLYMPUS)OM-D E-M1 Mark III 。今回はその中の一つ星空AF機能をレビューしていきます。
これまでの星景写真ではマニュアルフォーカス(以下MFと記載)でのピント合わせがお約束。それが一転、暗闇での煩わしいピント合わせから解放してくれる神機能が搭載、それが星空AFなのです。
今までのMFでのピント合わせ方は?
ビフォアー星空AF時代のMFでのピント合わせはこんな感じですよね。
- フォーカスモードをMFに設定
- 液晶モニター(液晶ファインダー)を拡大表示
- 明るめの星を狙って拡大表示でピントを追い込む
MFでのピント合わせは慣れればそう難しい作業ではありませんが、はじめの頃は本当にピントを追い込めているのか自信が持てない場合も有るんですよね。
設定方法
- ライブビューブースト2に設定しておく
- 「スピード優先」OR「精度優先」のどちらかのモードに設定
- フォーカス設定を星空AFにセット
- AEL/AFLボタンを押し星空AFスタート
LVブースト(ライブビューブースト)の設定
LVブースト2に設定
まずは星明だけの暗い夜空も、ライブビュー画面で認識出来る様に設定します。
カスタムメニュー⚙【D2】→ 【 LVブースト】→ 【Off / On1 / On2】→ 【On2】を選択
LVブーストは撮影モード毎(M・BULB /TIME・COMP・その他)に設定する仕様になっています。私は星景撮影では『Mモード』を使用するので、今回は『M』を例に設定していきます。
ちなみに『A』や『Sモード』でLVブースト機能を使用したい場合は【その他】から設定します。
LVブーストにはOFF(通常撮影時の画面表示)の他に以下の通り2つのモードが有ります。
Off:露出設定通りにLV表示される。被写体が明るい場合の撮影(通常撮影)で使用
On1:露出設定より明るく表示される。勿論適正露出表示より明るく表示されるので注意
On2:On1よるも明るく表示される。星景撮影はこのモードがオススメ
明るい時間帯に構図設定やピント合わせが出来れば良いのでしょうが、そう行かないことが殆どですよね。こんな時「LVブースト2」に設定しておけば、暗い被写体を増感(ブースト)し明るく表示してくれるので暗くなってしまった現場での構図確認とMFでのピント合わせが楽になります。
この機能はE-M5mark Ⅱ以降の機種に搭載されているので星空撮影では積極的に使いたい機能です。
LVブースト2の詳細設定 『LV画質優先』に設定
LVブースト2にはもう1階層下に設定項目があり、以下の2つから選択します。
星空撮影ではスピードは要求されないので『LV画質優先』を選択します。
星空AFの精度を設定する『精度優先』OR『スピード優先』
【MENU】 ⇨ 【カスタムメニュー⚙A4 】⇨ 【星空AF設定】⇨【速度優先】OR【精度優先】を選択
『速度優先』:AFのスピードを優先
『精度優先』:AFの精度を優先
次は星空AFのオートフォーカス精度を設定します。
ここで面白いのが『速度優先』と『精度優先』の2つの設定項目が有ることです。
普通に考えれば星空撮影では『精度』が命と思ってしまいますが、『速度優先』は何と手持ち撮影も想定されている機能なのです。
デフォルトでは『速度優先』に設定されていますが、三脚等を立ててしっかり撮影する場合は『精度優先』に設定しましょう。
望遠では流石に無理でしょうネ。しかし広角では手振れ補正機能では一日の長があるオリンパス、何とか撮れてしまうのかでしょうか!?結果は記事の後半で試していきます。
フォーカス方法の設定 『星空AF』
『AF+MF』機能を『On』に設定
【MENU】⇨【⚙カスタムメニュー】⇨A1【AF+MF】⇨【On】
デフォルトでは【OFF】に設定されているはずです。
この機能を【On】にすることにより、AF設定時にMF操作が可能になると同時に『星空AF』設定時にもMFが使用出来る様になります。
『AEL/AFLモード』の設定
ここではシャッターとAEL/AFLボタンを押した場合の、AFや測光方法を設定することが出来ます。
初期設定では、AEL/AFLボタンを押すと星空AFがスタートする様になっています。
通常撮影の様にシャッターボタン半押しで星空AFをスタートすることも可能です。
AEL/AFLボタンでAFスタートする場合は設定変更する必要はありませんが、一応確認しておきます。
【MENU】⇨【⚙カスタムメニュー】⇨A1【AFL/ AFLモード】⇨【★AF】
【mode 1】 ・ 【mode 2】 ・ 【mode3】 から選択
AF方式で『星空AF』に設定
【MENU】⇨【⚙カスタムメニュー】⇨A1【AF方式】⇨【★AFMF】
最後にAF方式を『星空AF』が使える様に設定します。
上では【MENU】から設定していますがスーパーコンパネからも可能です。
撮影現場ではスーパーコンパネからの設定の方が早くて便利です。
撮影開始 フォーカスエリアを合わせてAEL / AFLボタンを押す」
最後に【AEL / AFL】を押すと、AFの動作が始まります。
カメラが星空に向かってAFの動作をするなんて・・・今まで考えたことも無いので何とも不思議な光景に思えます(笑)
【作例】手持ちで星景撮影にトライ!
今年は梅雨が長引いてなかなか星の撮影に行けなかったのですが、お盆も過ぎた頃ようやく近場の撮影に出掛けられました。
共通データ
- 使用レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
- 手振れ補正:On
- 絞り値:F1.8
- 速度優先AFで手持ち撮影
まずは人気の無いテニスコートで慣らし撮影をしてみましょう。月明かりがまだ明るい時間帯で空もまだ明るめ。
さあ生まれて初めての手持ち星景撮影です!
ISO3200でシャッタースピードは5秒で設定。AEL/AFLボタンを押すと「ククククッ」とカメラからAFの作動音が。星にカメラを向けながらのAFは何とも奇妙な感覚です。約3秒ほど経過し「ピピッ」という音がフォーカス合掌を知らせてくれます。その後はシャッターボタンを押込むだけの簡単撮影。
上の写真ではカメラをガッチリ身体に固定しSS10秒で撮影しました。三脚を使用しないでSS10秒で何とか撮れるなんて・・・オリンパスの手振れ補正機能も恐るべしなのです。
まだまだ暑いですが高原ではススキが揺れていました。秋を実感したひと時です。
月が沈みかけの時間帯、丁度月の上方に天の川が流れていました。ISO6400でも十分使える画質です。
下の画像は画像の中央部分を切り出したものです。
ピントも十分合っており、手持ち撮影でこれだけの画が得られるなんて感激なのです。
手持ちでシャッタースピード5秒の撮影を可能にしているのはオリンパスの手振れ補正の強さもさる事ながら、今回使用したM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PROというレンズの存在もあります。
手持ち撮影ではやはり広角レンズは有利ですし、F1.8絞り開放でもコマ収差がよく抑えられておりなおかつ小型軽量。星撮りに最適のレンズなのです。
下の画像は右上隅の部分を拡大したものですが、星の比較的良好な形を保っています。
フィッシュアイ独特のクセが嫌いでなけらばE-M1 Mark IIIとかなりオススメの組み合わせです。
まとめ
「すごく便利!」
星空AFを使用し手持ち撮影での感想はこの一言に尽きます。
実際に星空AFを使用して感じたのが、撮影の自由度と効率が大幅にUPするということです。
三脚を使用しなくても済むので構図の自由度が高まり、様々なアングルからアプローチが可能になります。
星空AFのメリットを簡単にまとめると以下の様な感じでしょうか。
他には、レンズ交換した後でも星空AFで容易にピント合わせ直しが出来る点も大きなメリットです。
とにかく星にAFが使える喜びの方が大きくて、不満な点は正直あまりありません。しかし今後の期待を込めて敢えてデメリットを挙げてみました。
星に雲がうっすらとかかった状態や、光量が小さい星ではやはり正確なAFが難しい場合も。これは通常のオートフォーカスでも難しい状況なので致し方無いところ。またフォーカスに時間が掛かることも(と言っても長くても4秒程)あるので短縮されるとさらに嬉しいです。
この機能は今後更にブラッシュアップされるハズですので期待したいですね。
MFでの星へのピント合わせは慣れの問題とも言えるのですが、実際にこの星空AF機能が搭載されていると便利過ぎてまず使用してしまいます。
また強力な手振れ補正機能を搭載しているオリンパス機らしく、今まで不可能だった手持での星空撮影という、撮影の幅を大きく広げてくれている点が何よりも素晴らしいと感じました。
この記事を書いている時点でこの機能を搭載したカメラは私の知る限り他に存在しないのですが、星空AFはE-M1 Mark IIIを選ぶ上での大きなポイントと言えるでしょう。
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