星景写真撮影日記『星景写真始めます』の第4回目。今回は『星空撮影用レンズ選びのポイント』と合わせて『星撮影に強いおすすめレンズ』についお話していきます。
前回では星景撮影に適した三脚についてお話ししました。
<前回の記事>➡︎『夜空の長時間露光撮影に欠かせないブレない三脚の選び方』
いよいよ今回はレンズ選びです。これが揃えば取り敢えずは星を撮ることができますね!。
※話中はソニーEマウントの機材が中心になりますがポイントは他メーカーでも同じです。皆様の参考になれば幸いです。
星の撮影は特殊?
『星景撮影は特殊』と言われることが有りますが、実際どうなのでしょう???。
『様々な被写体を突き詰めて行くと写真撮影は結局どのジャンルでも特殊』と思っていたのですが、少し考えてみると『やはりちょっと特殊か』と思うことも(笑)特殊な点、それは・・・
画像内で、星=点(⚫︎)の描写が多いことです。
何だか至極当然の事を言って怒られそうですが、他の被写体では点が連なり線で描写されますが、星はあくまでも点(⚫︎)なんですよね。現実の星の光がレンズで集光され、そして映し出された点(⚫︎)の描写のされ方が中々の曲者なのです。
今回は(⚫︎)と合わせて星空撮影に適したレンズ選びのポイントについて以下にご紹介していきます。
星景撮影用レンズを選ぶ上でのポイント
画角は広い方がおすすめ
大地と大空を絡めて撮影する星景写真の場合、できる限り広い画角のレンズが有ると撮影の幅が広がりますよ。撮り方によって一般的には焦点距離35mm以下の広角レンズが用いられる事が多いです。50mm 標準レンズクラスも使う場合がありますが使用頻度が高いのは35mm以下です。
昼間の写真ですが画角の違いが分かる画像を以下に用意しました。
上の写真は超広角レンズの12mmで撮影したもの。ここに14mmと24mmで写る範囲を赤の破線で示しています。標準ズームでの広角域24mmと比較して超広角域12mm〜14mmはかなり広く感じませんか!?
35mm〜50mmでは地上の被写体を強調したい際にも有効です。
焦点距離35mm付近で撮影
画中で星空が占める率は少ない
ILCE-7M3
FE 24-105mm F4 G OSS
ISO6400 F4 SS15
星空の割合を大きく写たい場合は24mm以下の広角レンズをおすすめします。
単焦点かズームレンズ選ぶならどっち?
単焦点は24mmF1.4など明いレンズが有って使ってみたい玉が結構あります。一方のズームレンズはF2.8が一般的。最新のカメラは高感度性能が優れているのでF2.8で十分撮影可能です。
一般論では単焦点レンズの方の像が安定していると言われていますが、実際に安定するには少し絞る必要があったりとその特性は機種によって異なります。また最近のズームレンズは結構高性能なので、この辺は各自サンプル画像を見て判断するした方が良いでしょう。
開放絞り値F2.8以上の明るいレンズを選ぼう
レンズの明るさ(開放絞り値)はとっても重要。なぜなら星の光はとても弱く、なるべく明るいレンズで沢山の光を取り込んでもらいたいからです。
明るいレンズの特徴
カメラの高感度能力にもよりますが、F4でも何とか星景写真は撮れます。しかしF2.8で撮影出来るレンズであれば感度も一段分稼げますし、その仕上がりの差はかなり大きいです。
それと短い露光時間のメリットは、星の形を点で撮れること。
広角レンズで星を点で撮りたい場合、一般的にはシャッタースピード15秒以下で設定すると良いと言われています。
明るいだけのレンズではダメなのです。
ここまで読んだだけでは、「明るいレンズさえ選べば無問題!」と思ってしまいがちですが、実はそうでもないのです・・・。
画像中央部を拡大
(鳥居の下部分)
星は安定した像点になっています
画像左上部の拡大
(鳥居の左上部分)
星の形に歪みが生じています。
ただこの位なら個人的にはOK
詳しくは以下の『収差』の項目で触れるますが、
絞り値開放では星景写真撮影で必要なレンズの性能が出しきれない場合が有るのです!特に画像周辺部での画質の落ち込みが大きくなります。
「折角F1.4の明るい広角単焦点レンズを買ったのに、開放では使えないなんて!」
この様なことは意外と普通に起こります(涙)。
しかし1・2段程絞ると画質は若干改善する事が多く、F1.4のレンズであれば1段絞ってもF2、明るさのメリットは十分享受できることになります。
では全てのレンズが開放で使えないかと言うとそうでもなく・・・この辺がレンズ選びの難しくも面白いところなのです。
絞り開放での撮影が決してNGと言う訳ではありません。後はどの辺の画質で満足するか、この辺の落とし所が一番重要なのかもしれませんね。画像処理で修正する手もあります。どんな高級レンズだって星を撮るだけの為に存在する訳ではないのですから。
収差について知っておこう(簡単に)
収差については以下に簡単にまとめめておきます。
点が歪んで表示されてしまう
夜明け前の天の川を調子に乗って絞り値開放F1.4で撮影した画像です。小さな画像では鑑賞上の問題は少ないのですが、画像周辺部を拡大した下の写真をご覧下さい。
星の形が歪んでいます。非点収差と呼ばれる現象です。鳥が飛んでいるみたいですね。
SNS上で鑑賞する分では景色全体の雰囲気が伝わればそれも良いのですが、A4・A3ノビでプリントすると収差の影響を受けた部分は結構目立ちます。
収差の出方は使用するレンズによっても異なります。
対処方法としてはソフトフィルターを使用したり、絞りながら収差の様子を見ていくことになります。但し1・2段絞っただけでは完璧に収束しない場合もありので、どの辺で落とし所をつけるかが肝要になります。
線が歪んで表示されてしまう
他の収差で気になるのは歪曲収差(ディストーション)でしょうか。星景撮影の場合では水平線や地平線が直線で表示されない状態です。
屋内でのデータで恐縮ですが、(上段)歪曲収差を補正しない画像、(下段)Lightroom(ライトルーム)で歪曲収差を補正した画像です。一番わかりやすいのは写真上の天井梁の部分です。(上段)の補正しない画像の梁はたわんで表示され、一方(下段)の補正あり画像での梁のたわみは改善されています。
補正作業自体は画像編集ソフトにレンズプロファイルさえ入っていればボタン一つの簡単操作でOKです。
以下に収差について少し詳しく書いていますが、この後は読み飛ばしても大丈夫です。
収差(しゅうさ)とは〜理想と現実のギャップ
シュールなタイトルになってしまいましたが・・・
要は『レンズを通して映し出される世界は現実とは異なる』こんな感じでしょうか。
もう少し噛み砕くと、
理想(結像状態):【被写体(物点)】=【写出された画像(像点)】
現実(収差発生):【被写体(物点)】≠【写出された画像(像点)】
理想では点(⚫︎)は点(⚫︎)の画像に同じ形で表示されれば良いのですが、現実では(⚫︎)はぼやけた点(◉)だったり変形した点(➻)の様に表示されたりと、理想的な結像状態からズレ・広がりが有る(収差が発生している)状態になってしまうことなのです。
※(⚫︎)(◉)(➻)などの特殊記号はイメージです。実際の収差の像とは一致していません。
レンズ形状で発生する収差の種類(ザイデルの5収差)
収差に於いてレンズの形状によって発生するものが単色収差です。これには以下の5種類がありサイデルの5収差と呼ばれています(サイデルはドイツの研究者の名前)。
- 球面収差
- 歪曲収差
- 像面湾曲
- コマ収差
- 非点収差
球面収差
レンズに入射した光が一つの点として結像しない⇨ボケた点になること
歪曲収差(ディストーション)
歪曲収差とはその名の通り像が歪んでしまうこと。
その歪み方は画像の中心部に向けて膨らんだり(樽型収差)、凹んだり(糸巻き型収差)するのですが、水平線や地平線は直線で写って欲しいものですよね。
歪曲に関してはソフトで簡単に補正が可能です。
像面湾曲
像面歪曲によって生じる事象は『ピントが合っていない場所が生じること』です。
例えば画像中心付近でピントを合わせた場合、センター部分はピントが来ているのに周辺部はボケてしまう状態です。画像均一にピントが欲しい建物や風景での遠景撮影では困ってしまう現象なんですよね。
コマ収差
コマ収差とは、本来点として表現されるべきものが尾を引いた様(彗星の様)に表示されること(光が一点に収束していない状態)です。
これも画像周辺部に顕著なのですが、これが結構気になったりするんですよね。
一般的には絞るにつれ解消されるのですが出来れば開放値でコマ収差が少ないレンズが星景撮影では望ましいと言えます。
非点収差
本来1つの点として集まるはずの像が1点に集まらない状態です。これがどの様に集まらないと言うと・・・
放射方向(S方向:サジタル方向)
同心円方向(M方向:メリディオナル方向)
上記の方向の線分上に分離してしまうことがあるんですね。
例えば格子状の物体を撮影した際に縦線がクリアに表示されるのに対して横線はボケて表示される状態です(その逆も有り)。
点ばかりを撮影する星景写真はレンズにとってちょっとイジワルな被写体なのかもしれません。ここまで収差が悪者であるかの様な書き方でしたが、収差を逆に楽しむのも写真の世界。収差を愛するあまり様々なレンズに手足を出しレンズ沼に嵌っていく訳なのです。
この辺は撮影者の許容範囲にもよるので自分の用途に合わせて選択する感ですね。
周辺減光はそれほど気にしなくてヨシ。
次は収差から離れて周辺減光についてです。その名の通り画像周辺の光量が落ちてしまうことで、スマホのエフェクトでもご存知の方が多いと思います。
周辺減光が起こる原因は今回割愛しますが、発生しやすい状況を以下にまとめます。
- 広角
- 開放絞り値(F値)が明るい⇨絞ると改善する
- イメージセンサーのサイズの大きさが大きい
あ、星空撮影は正に周辺減光が出やすい状態ということですね。但し周辺減光は歪曲収差の補正と同様、画像編集ソフトで簡単に補正可能です。それほど気にしなくて良いでしょう。
星景撮影に適したレンズは?
- ★★★★・・画角 星空を大きく撮るなら24mm〜の広角レンズ
- ★★★★★・開放絞り値がF2.8〜の明るいレンズ
- ★★★★・・出来れば絞り開放付近で収差が抑えられている
- ★★★★・・逆光性能
- ★★★・・・防塵防滴性能
- ★★・・・・小型軽量
主観で重要度を最大★★★★★でランク付けしています
以下に星景撮影に適したレンズをピックアップしていきます。一部を除きソニーFEマウント用(フルサイズ)でご紹介していきますが、これらはあくまでも一例です。タムロン、トキナー、サムヤン等からも星空撮影に向いた魅力的なレンズが発売されているので、ご予算に合わせて探してみてください。
おすすめズームレンズ
ソニーαユーザーでありながら真っ先に紹介したのがニコン・・・すみません。でもまず一番先に紹介しておきたくてご了承を(うちのカミさんニコン党なので)。
星景写真で真っ先に思い浮かぶのがニコン AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED。発売はだいぶ前(2007年)ですが写りはまだまだ現役。星景撮影で使用勝手の良い焦点距離14-24mmをカバーし、ニコン自慢のナノクリスタルコートは逆光にも強く安心して撮影出来ます。私も以前使用していたのですが、中々のキレでした。但しゴーストは100%防げる訳ではないので月夜の撮影では角度によってハレキリは必要です。この辺は超広角レンズの宿命ですね。
星景撮影愛好家で使用している方は多くて、カメラが他メーカーでもマウントアダプターを挟んで使用している方も結構いらっしゃいます。出目金レンズでフィルターは付けられませんが、これ1本あれば何とかなります。
安くはありませんが、中古品の流通量も多いのでチェックする価値はあります。
SIGMAの14-24mm F2.8 DG DN (Art A019)も非常に使いやすい焦点距離です。超広角ズームレンズにつきレンズ形状は出目金ですが、何とリアフィルダーホルダーを装着しており、フィルターワークも楽しめる様になっています。SIGMAレンズはでかい・重いイメージですが本レンズではかなり軽量化がなされた模様。
SIGMAさん凄い!
SONY純正FE 12-24mm F2.8 GM SEL1224GMは何とワイド側が12mm!これは凄いです・・・値段も凄いですが(汗)。上に紹介したSIGMA 14-24mm F2.8 DG DN (Art A019)と迷う方は多いかと思います。ワイド側12mmにどこまで魅力を感じるかでしょう。
【2020年9月26日追記】SONY FE 12-24mm F2.8 GMのレビューと作例を掲載しました。
星景写真のサンプルも載せていますので下記のリンクよりご覧ください。
おすすめ単焦点
SONY純正のFE 24mm F1.4 GM SEL24F14GMです。絞り開放値F1.4なので絞っても余裕があります。サンプル写真ではボケがとても綺麗なので星景写真以外の用途でもオススメです。フィルターも装着出来るので安心ですね。
SONY純正FE 20mm F1.8 G SEL20F18GはF1.8の無理のない設計で重要373gと非常にコンパクト。
20mmの画角は星景向きで、開放F1.8でも画像が安定しているので非常に使いやすいです。
私もこのレンズを現在愛用していまして、別記事でレビューしているので参考になれば幸いです。
まとめ
以上星空撮影用レンズを選ぶ際のポイントについて、かいつまんでお話してきました。星景撮影用レンズでスペックを追い求めていくと大変なことになってしまいます。その辺は予算と画質を折り合わせながら選択することが重要になります。
ここまでの連載でカメラと三脚とレンズの選び方について書いてきましたが、その他に星撮に必要な周辺グッズも多数あります。
その辺は次回またご紹介していきますのでご覧いただければ嬉しいです。最後まで読んで頂きありがとうございます!
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